Interview
LGBTを含めたすべての子どもが輝ける学校・学級づくりのために
NPO法人ASTA 理事
筑波大学 人間系
京免徹雄
学校というのは、子どもたち1人1人が自分らしいキャリアを形成するために、友人、先輩後輩、教師とともに学ぶ場所です。しかし、13人に1人の割合でいるとされるLGBTの存在は、教育制度の想定から抜け落ちており、その子どもたちの多くが学校生活において「生きづらさ」を抱えています。2015年4月30日には、文部科学省から各教育委員会向けの通達「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」が出されていますが、その理解度は充分とはいえません。また先生方の中には、この問題を認識しつつも、具体的に何ができるかわからないと悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような状況を鑑みたとき、NPO法人ASTAの行う「LGBT出張授業」は、「LGBTを含めたすべての子どもが輝ける学校・学級づくり」に大きく貢献するものです。LGBT当事者を交えた少人数でのダイアローグは、形式的・抽象的ではなく、本質的・具体的な形での人権教育・道徳教育・キャリア教育の機会を提供します。日常生活では見えにくい当事者との対話を通じて、マイノリティ(LGBT)の子どもは「孤独ではない」ことに、マジョリティの子どもは「性の多様性とその尊重」に気付くことができるはずです。また、教職員も当事者やその家族の声を聴くことで、マイノリティの子どもが安心・安全に学校で過ごし、マジョリティとともに成長していくための配慮・支援の在り方を発見できるのではないでしょうか。
多様性を尊重し、他者との違いを乗り越えて協働できる学級・学校で育った子どもたちは、将来的には次世代を担う市民として、LGBTを含むあらゆる差別を許さない社会の創造に向けて参画してくれるはずです。このように、NPO法人ASTAの活動は、LGBTの直接的支援を越えて全ての子どもの発達に寄与するものであり、平和で民主的な社会の形成者として必要な資質を備えた市民の教育にとって有意義であると信じています。